親の困惑した顔が目に浮かぶ

2011.05.16

結婚式を二日後に控えたその日、私の留守中にM子からのメッセージが入りました。「どんなに遅くてもよいから、ぜひお会いして相談したいことがありますので……」という泣き声のメッセージです。実は、私はその週末は急な仕事で地方に出かけていたので、そのメッセージを聞いたのは、M子の披露宴が済んだ翌日のことでした。M子からのメッセージは式の二日前に三回。相談したいという内容は分からないけれど、その切羽詰まった声から、大体は想像がついたのです。早速、M子の家に電話し、事情を尋ねたところ、泣きながらM子が話したことは次のような内容でした。式が近づくにつれ、この結婚はうまくいかないような気がするという思いが強くなった。不安感が募り、ここ一週問は夜も眠れないという日が続き、とうとう式の二日前に結婚を中止したいと両親に告げたが、〈今になって何を言うのか〉と叱られた。かといって、どうしても結婚に踏み切る気持ちになれず、パニックになり、S・O・Sの電話をした、と言うのです。「何が、そんなに不安に感じられたのか?」と尋ねると、「どうも二人の価値観が違いすぎてうまくいかないと思う」と言います。それが、結婚式や披露宴の準備の話し合いをしているうちに分かってきたらしいのです。たとえば、初めはキリスト教式でやることに同意していたのに、親戚の手前、どうしても神前で白無垢を着てやってほしいと相手からの申し出があったとのこと。わざわざ白無垢を着るために神前で挙式をするとか、そのために何十万円もの衣裳料を払うのは馬鹿げているからと反対したが、〈結婚するまでは母親の言う通りにしてくれ〉と言われ、一度は妥協してしまった。しかし、どうも式を二度することが納得いかないし、何かと妥協を迫られることが多くなり、このままだとどうなるのか、母親の言いなりになっている相手はマザコンではないか、などと考えたら、結婚することが恐くなってしまったと言うのです。このままの状態で式に臨んだら、式の途中で逃げ出すことになりかねないと思って、自分の気持ちを親に打ち明けたところ、真っ向から反対されたというわけです。それは、そうでしょう。親の立場になってみれば、式の二日前になって止めるというのはあまりに無茶じゃありませんか。親の困惑した顔が目に浮かびます。
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